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ジョージ・ソロスと「ブラック・ウェンズデー」──市場を動かした一人の投資家
こんにちは、『えすふぁみ☆家族で株投資』です。
水曜日は「お金にまつわる歴史と雑学」をテーマにお届けしています。
今回は、世界経済の歴史に刻まれた伝説的事件──
「ブラック・ウェンズデー」(1992年9月16日)を取り上げます。
1990年代初頭、イギリスは欧州連合の通貨協定「ERM(欧州為替相場メカニズム)」に参加していました。
ポンドの為替レートを一定の範囲に保つため、政府と中央銀行が協力して為替を安定させようとしていたのです。
しかし当時のイギリス経済は、成長が鈍化し、インフレ懸念も強く、ポンドの実力は“高く見積もられすぎていた”といわれていました。
この「市場の歪み」に、ひとりの投資家が気づきます──その名はジョージ・ソロス。
ジョージ・ソロスの戦略
ジョージ・ソロスはハンガリー出身の投資家で、後に「イングランド銀行を打ち破った男」と呼ばれることになります。
彼の投資哲学の中心にあるのが**「市場の再帰性(リフレクシビティ)」**という考え方です。
これは、「市場は常に正しいわけではなく、人々の思い込みや感情によって過大評価・過小評価される」という理論。
ソロスはこう考えました。
「イギリス経済の実態に比べて、ポンドは明らかに高すぎる」
彼はこの“過大評価”が崩れると予測し、**約100億ドルものポンド売り(空売り)**を仕掛けます。
イングランド銀行はポンド防衛のため、
金利を10% → 12% → 15%へと2度引き上げ
大規模な市場介入を実施
しかし、ソロスの仕掛けた売り圧力はあまりに大きく、介入の資金では支えきれませんでした。
「ブラック・ウェンズデー」の結末
1992年9月16日──
イギリス政府はついにERMからの離脱を発表。
ポンドは急落し、固定相場制は崩壊。
この歴史的な一日は「ブラック・ウェンズデー」と呼ばれるようになりました。
結果として、ソロス率いるクォンタム・ファンドは10〜20億ドルの利益を得たとされています。
ソロス流・マクロ戦略の特徴
ジョージ・ソロスの投資スタイルは、世界の政治・経済・心理を見抜くマクロ戦略と呼ばれています。
市場の感情を逆手に取る「逆張り」思考
群衆が「安心」しているときこそ危険だと考え、逆の方向に動く勇気を持つ。**「市場は必ず間違っている」**という前提
価格は常に過大評価・過小評価されており、そこにこそチャンスがある。大胆さと緻密なリスク管理の両立
巨額の資金を動かしながらも、常に“最悪のケース”を想定して動く。
この事件が残した教訓
「ブラック・ウェンズデー」は、ひとりの投資家が国家の金融政策を動かした衝撃的な事件でした。
しかし、それ以上に大切なのは、この出来事が示した市場の本質です。
市場は常に合理的とは限らない
政策や制度で完全にコントロールすることは不可能
情報と心理を読み解く観察力が、最大の武器になる
ソロスの行動は賛否両論を呼びましたが、彼の成功は「市場を理解するとは、人間を理解することだ」という哲学を証明したともいえます。
まとめ
イギリスは1990年代初頭にERMでポンドの為替を固定していた
経済実態との乖離を見抜いたソロスが100億ドルのポンド売りを実施
「ブラック・ウェンズデー」にイギリスはERM離脱、ソロスは巨額の利益を獲得
マクロ戦略の核心は「市場心理を読む」こと
教訓:市場は常に不確実、だからこそ観察と冷静な判断が重要