目次
1. ブラックマンデーとは何だったのか
1987年10月19日(月)──アメリカ・ニューヨーク市場は歴史に残る大暴落を記録しました。
ダウ平均株価は 前日比22.6%下落。
これは一日としては史上最大の下落率であり、後に「ブラックマンデー(暗黒の月曜日)」と呼ばれることになります。
背景には、米国の金利上昇懸念や、当時導入された**プログラム売買(自動売り注文)**が過熱したことがありました。
コンピュータが一斉に売りを出すことで連鎖的に株価が暴落し、世界の市場に不安が広がったのです。
2. 東京市場に訪れた“異常な静寂”
その余波は、翌日10月20日の東京証券取引所を直撃しました。
開場直後から売り注文が殺到し、**日経平均は前日比3,836円安(-14.9%)**と、過去最大の下落率を記録。
取引所の電光掲示板には「売り気配」の文字が並び、どの銘柄も値がつかない。
普段は活気に満ちた場内が、まるで時間が止まったように動かなくなったといいます。
3. 売りが殺到、買い手不在──市場が止まった日
当時の証券トレーダーたちは、目の前の光景を「売っても売っても買い手が現れない地獄」と表現しています。
電話の受話器は動かず、アナウンスも途絶え、電子板の数字だけが赤く点滅する。
誰もが「何か言葉を発すれば崩れ落ちる」ような緊張に支配されていたそうです。
一部のトレーダーはそのときの場内をこう振り返ります。
「誰も立ち上がらず、誰も電話を取らない。
足音ひとつ聞こえない。
ただ“下がり続ける音のない相場”を、みんなが黙って見ていた。」
それは、金融市場に生きる人々が「恐怖」と「無力」を同時に感じた瞬間でした。
4. 人々が体験した「無音の恐怖」
この日の取引所の沈黙は、単なるパニックではなく、市場心理の極限状態を象徴していました。
誰もが「これ以上売れば市場が壊れる」と感じていた
しかし「売らなければ自分が沈む」とも思っていた
結果、誰も動けず、「沈黙」という形のパニックが起こった
この「無音の恐怖」は、金融の世界では今も語り継がれています。
それは数字やニュースでは伝わらない、人間の感情そのもの──
「相場の静寂が、心の動揺を際立たせる瞬間」だったのです。
5. その後の回復と教訓
ブラックマンデーの翌週、日本政府と日銀は迅速に資金供給を行い、
金融機関にも「冷静な対応」を呼びかけました。
すると、10月21日には株価が急反発。
市場は一時的な落ち着きを取り戻します。
それでも、あの“静まり返った取引所”の光景は長く証券業界で語り草となり、
「市場の恐怖を感じた世代」として、後の金融マンたちに強い印象を残しました。
6. 現代に活かせる“冷静さ”の価値
2025年のいま、AIによる取引やSNSによる情報拡散が進み、
当時よりも市場ははるかに速く動きます。
しかし、「恐怖の瞬間ほど冷静であることが求められる」という教訓は、今も変わりません。
投資家ができる最善の行動は、
感情で売買しないこと
長期の視点で市場を見ること
冷静な判断を支える知識を持つこと
この三つです。
まとめ|相場は「音のない恐怖」からも学べる
1987年10月、世界を襲ったブラックマンデー
東京市場では**日経平均3,836円安(-14.9%)**という歴史的下落
「誰も声を発しない」異常な静寂が、相場の恐怖を象徴
政府と市場の冷静な対応で急速に回復
今も語り継がれる“沈黙の一日”は、冷静さの大切さを教えてくれる
相場が暴れるとき、人の心もまた大きく揺れます。
けれど、その中で「一呼吸置く冷静さ」を保てる人こそ、長く市場に残れる投資家です。